東方と戦国 - 巡
2017/03/22 (Wed) 16:32:01
初めまして巡です。これからよろしくお願いします。 べにさんお久し振りです。
神生、読みしんせい、種族??、
説明・・神社から地獄や魔界に通じる門を守っている元祖門番。
陰陽玉形態のほかに男性形態と女性形態がある。
静かなる、神の社。
現実と幻想の境に建つその宮に、何処とも知れぬ場所から、妖しき物の怪が現れる。
両腕に尊き命を抱えて。
――漸く見付かったか。
「あら。留守かしら」
――居るわよ、此処に。
「まあ、どうせ暇なひと達が居るから大丈夫でしょう」
――喧しい。
――誰が暇人よ、婆。
「ばばー!」
幼子が虚空の囁きに応えた。
妖怪は額に青筋を立てながらも、口許に浮かべた柔和な笑みを崩さない。
「聞こえないと思って好き勝手言ってるわね」
――直じかに聞きたいのなら貴様も童に成れば良かろう。
――無理無理。こいつが子供になったって邪念塗れなのは変わらないわよ。
悪態を吐いて止まぬ、虚ろな何者か。
彼等の嘲笑を幼子が真似ると、妖怪は一層の怒りを滲ませ、しかし飽くまで優しげに、彼女を床とこへ下ろした。
幼子はよろよろと危なげに歩き出し、其処に見える幻想へと近寄って行く。
――齢は幾つか?
「よわいくつ? よわいくつしらない」
「さて? 五百日は過ぎたのかしら? 孤児みなしごで、正確には判りませんわ」
――お名前は? ね、お名前教えて。
「・・・!」
「それも漢字が判らないのよ」
何もかもがあやふやな、幼い少女。
明らかなことが有るとすれば、唯一つ。
彼女が何れ、・・の巫女と呼ばれる存在になること。それだけである。
「とりあえず置いて行くから、後は宜しくお願いね」
――帰る前に……。
――お賽銭!
「おさいせん!」
少女の声が高く響く。
妖怪は如何にも『仕様が無い』といった風情で苦々しく笑い、拝殿の方へと歩いて行った。
その場に残るは、少女が一人か。
否。その円らな眼には、愛おしげに彼女を見詰める、男と女の姿が確かに映っている。
――こうして我等を拝めるのは今の内だけだ。篤と見ておけ、・・・。
――いっぱいお話しましょうね。どうせ忘れちゃうでしょうけど。
少女は途端に不思議そうに、小さく首を傾げて二人を見上げた。
――然し、誕辰も知れぬとは。今の世にも斯様な娘が居るのだな。嘆かわしいことだ。
――それくらいの方が良いでしょ。・が親を殺して奪って来るより、ずっと良いわ。
と、女が少女の肩にそっと手を置き、柔らかに微笑む。
――生まれた日なんてどうでも良いけど、お祝いする日は欲しいわよね。
「ほしい!」
わけも分からず欲しがる少女の、余りに無垢な振る舞いに、二人は到頭打ちのめされた。
――宜しい。では、今日をお前の生まれた日としよう。
――ハッピーバースデー、・・・。
「はっぴ?」
はいからな祝いの言葉をやはり解せず、少女は再び首を傾ける。
それから彼女は、俄にふわりと宙を舞い、何処かへ飛び去ってしまった。
二人は大いに驚き、暫し呆気に取られていたが、頭をぶつけるなどしては事であると、行方を探し始めた。
しかし、間も無く少女がズルズルと、何かを引き摺って戻って来た。
――おや、それは……。
「はっぴ!」
得意満面に両手を広げ、見せびらかされた一枚の法被。
賽銭だけでは飽き足らず、故無き贈り物まで強請ねだられた妖怪の悲哀が、彼女の明るさを際立たせていた。
――大物だわ。
――先が楽しみだな。
大きく笑う二人に釣られ、少女もまた、楽しげに笑った。
◆
「・・。この飾ってあるハッピは何か曰くが有るんですか?」
「わかんないけど昔から飾ってあるのよ」
「ハッピを」
「そう。何か有るとは思うのよね。 ・・は何故か、懐かしい笑い声を聞いた様な気がした。